Monday, May 3, 2010

『A SERIOUS MAN』

コーエン兄弟の『A SERIOUS MAN』を観ました。

舞台は1967年アメリカ中西部のミネソタ州・ミネアポリスの郊外。
主人公は、優しくて真面目なユダヤ人高校の物理の先生。
妻と2人の子供がいて、平凡な人生を送っているのに、次々と災難が舞い込んで来るというお話。
旧約聖書のヨブ記になぞらえているそうです。

私はコーエン兄弟の作品は全て大好きですが、この作品はその中でも上位に入ります。(うちの旦那さんも大絶賛)
スター級の俳優を一切起用していない事から「花が無さ過ぎる」、ユダヤ人社会に焦点を当てている事から「ユダヤ人以外に分かりづらい内容」等の酷評も有る作品ですが、私は花が無い所がまた面白いと思ったし、ユダヤ教について詳しくない私でも、十分に理解出来る内容でした。
賛否両論の有るラストも私達は大好きで、コーエン兄弟には本当にがっかりさせられません。

DVDのカバーの写真は、主人公がテレビのアンテナの角度を直す為に屋根に上っている所で、私はこのシーンが大好きです。
屋根から眺める近所、青空と雲、暑くも寒くもない穏やかな日。


映画も最高だったけれど、DVDに入っていたコーエン兄弟のインタビュー等がまた面白かったです。
主人公はモデルとなった人がいる訳ではないけれど、ユダヤ人であるコーエン兄弟の両親など、まわりにいた人達を参考にしたそうです。
この映画の苦労した点は、出演者全員が本当にその辺にいる人達風なのに加え、妻の浮気相手がセクシーとは真逆の人なので、制作費を集めるのが大変だったそうです。(笑)

テレビに白黒B級サイエンスフィクションの映像が流れている、数秒程の短いシーンが有るのですが、昔の映画の画像を使ったのかと思ったら、実はセットもモデルも全てこの短いシーンの為に制作したものだと知って、驚きました。
このシーンの製作過程を説明したものもDVDに入っていましたが、見ていてわくわくしました。

1967年という時代背景を細部に渡ってこだわっていて、その製作シーンもとても興味深いものでした。
何しろ街並、車、生活用品、全てがヴィンテージ。
ファッションも興味深いです。
男の人達のパンツが、とーってもハイウエストで、パンツ丈が短過ぎる程短いけれど、当時は普通の事。
女の人のブラもダーツの入ったとんがった形で、現在の物とは大きな違いが有ります。


音楽も作品とマッチしていて、面白さに拍車をかけていました。

主人公は次々と舞い込む災難に悩み、ユダヤ教の聖職者Rabbiの所に『答え』を求めて相談しにいくのですが、Rabbiのお話のBGMが、Jimi Hendrixの『Machin gun』で、曲に合わせて進行して行くのが面白いです。

作品の随所で流れるのはJefferson airplaneの『Somebody to love』。
Jefferson airplaneの曲は全4曲使われていますが、ぴったり過ぎる程はまっています。
かなりの高齢のRabbiが主人公の息子に発する言葉は『Somebody to love』の歌詞。
主人公の息子がラジオから聞いていた曲で、それをRabbiが知る由もないのに、、、
これが『答え』なのでしょうか?(笑)


映画のテロップで、『No animals were harmed.』(動物は傷付けていません。)というのを時々見かけます。
この映画もこの表記が有りましたが、それに加え『No Jews were harmed in the making of this motion picture.』(この映画製作にあたって、ユダヤ人を傷付けていません。)が有り、笑ってしまいました。