18編からなる「愛」をテーマにした作品で、パリ20区のうち18区を舞台に繰広げられる、1編5分程のショートストーリーです。
とにかく監督&俳優のの顔ぶれが豪華で、5分のという短い中に、それぞれの人生観や日常のひとこまが見事に描かれています。
作品の間に映されているパリの景色も素敵で、今すぐパリに行きたくなりました。
パリを舞台にしたオムニバス映画と言えば、
1965年の名作「パリところどころ(Paris vu par...)」
1984年「二十年後のパリところどころ(Paris vu par... vingt ans apres)」
こちらも一緒に楽しむと面白いと思います。
すでにアメリカでは公開されている「New York, I love you」も観たいと思っています。
特別なパリではなく、いつものパリを切り取った様な物語の数々、どの作品もきらきら輝いていますが、特に私の好きな8作品を紹介します。
7区「Tour Eiffel」シルヴァン・ショメ監督作品(Sylvain Chomet)
私の一番好きな作品で、DVDで何度も繰り返し観てますが、観れば観る程、増々好きになります。
ショメ監督の初の実写映画で、アニメ同様、音楽も良いし、映像も本当に可愛いです。
期待を裏切らない監督です。
孤独なパントマイムの男が主人公で、アパートのドアには「CON DE MIME」(英訳ではMIME ASSでしたが、日本語訳はどうなっているんでしょうか?)なんて、ひどい落書きがされているし、皆から白い目で見られているけれど、笑顔や走り方がとても愛らしく、私は思わず抱きしめたくなります。
監督がインタビューで話されていたのですが、パントマイム達は化粧をしてパントマイムを演じているのではなく、パントマイムとうい種類の人達。
つまり彼らは朝起きた時から素顔が白塗りの顔なんだそうです。
全編映像が美しく、特に恋に落ちてからの映像はため息ものです。
長編で続編映画を作って欲しくてたまりません。
1区「Tuileries」コーエン兄弟監督作品(Joel&Ethan Coen)
コーエン監督は今回も裏切らず、5分間の間で随分笑わしてくれました。
本当に大好きな監督です。
主人公は、モナリザ好きの冴えない中年アメリカ人観光客。
コーエン作品の常連でもある、私の大好きなスティーブ・ブシェミ(Steve Buscemi)が主人公で、こういう冴えない役を演じたら右に出る者がいないと思います。
DVDに収録されていたインタビューで聞いたのですが、どの作品も1〜2日での撮影だったので、多くの監督が天気に悩まされたそうです。
コーエン兄弟が地下鉄のホームでのロケを決めたのは、短い撮影期間では天気を選べないから、天気に左右されない様にとの事だったそうです。
6区「Quartier Latin」フレデリック・オービュルタン&ジェラール・ドパルデュー監督作品(Frederic Auburtin&Gerard Depardieu)
監督の一人はジェラール・ドパルデューで、俳優としてとても有名ですが、監督としても才能のある方です。
別居中の老夫婦が、それぞれすでに恋人もいて、正式に離婚する為にレストランで話し合いをするという物語りで、会話の中にそれぞれの微妙な気持ちが上手く表れているなと思いました。
脚本は妻役のジーナ・ローランズ(Gena Rowlands)が手がけ、76歳での脚本家デビューだそうです。
年を重ねても相変わらず素敵で、そして本当に多才な方です。
夫役のベン・ギャザラ(Ben Gazzara)も、本当にいくつになっても素敵です。
この2人はテレビ映画の「Hysterical Blindness」でも共演しているのを観た事がありますが、この映画の中での2人の恋は本当に素敵で、特にダンスを一緒に踊るシーンは,観ているだけで顔がほころんでしまいます。
ベン・ギャザラはこの作品でエミー賞を受賞されました。
両作品とも、「Buffalo'66」での、ビンセント・ギャロ演じるビリーのエキセントリックなパパ役とは大分イメージが違います。
2区「Place des Victoires」諏訪敦彦監督作品
主人公は、一週間前に息子を亡くしたばかりの母親。
母親を演じているのはジュリエット・ビノシュ(Juliette Binoche)で、カウボーイはウィリアム・デフォー(Willem Dafoe)
この監督の作品は初めて観たのですが、心に染み込んでくる、素晴らしい作品だと思いました。
とても悲しい話なので、今こうして思い出して書いているだけでも涙が出てきます。
5区「Quais de Seine」グリンダル・チャーダ監督作品(Gurinder Chadha)
主人公はセーヌ河岸で、友達と一緒に通行人をからかっている青年。
目の前で転んだアラブ系の女性を助け、彼女の美しさと純粋さに心を奪われてしまう物語なのですが、本当にこの女性が美しくて、私の心にも強く残りました。
14区「14e arrondissement」アレクサンダー・ペイン監督作品(Alexander Payne)
主人公は、デンバーから憧れのパリへ訪れた、郵便局に勤める独身の中年女性。
ひとりで歩き、ひとりで食事をし、ひとりで景色を眺める。
話し相手がいなくて少し味気ない思いの中、公園でひとり、あることを思う。
何でもない話なのに、とても強く印象に残りました。
16区「 Loin du 16e」ウォルター・サレス監督作品(Walter Salles)
パリ郊外に住む移民のシングルマザーが、産まれて間もない子供を託児所に預け、16区の豪華なアパートに住む一家のベビーシッターの仕事へ向かう。
贅沢な子供部屋で泣いている赤ちゃんに、最愛の我が子をあやす時と同じ子守唄を歌う。 両方の赤ちゃんの顔の映し方が印象に残りました。
19区「Place des Fetes」オリヴァー・シュミッツ監督作品(Oliver Schmitz)
ひとめ惚れをした女性と一緒にコーヒーを飲む夢をかなえたいと願う,孤独な男性の物語。
男性の歌う歌が印象的です。